トップカイザーサウンドオーディオクリニックの旅一流揃いであっても、良い音を出すのは本当に難しい

一流揃いであっても、良い音を出すのは本当に難しい



 どうやってもいい音にならなかったのが、『PB-BIGを試聴した途端に先が開けて見えた』とお電話を下さったのは台東区のS.Hさん。どのようなシステムをお持ちなのかも確認せず、近くでもありますから「一度クリニックに参りましょうか?」と持ちかけたのが事の始まりです。

 お伺いして腰が抜けそうなほどビックリしました。何にかといいますと、家の新築を機にAVの機材を全て新調したというその中身にです。写真をご覧頂いたとおりの名だたる顔ぶれです。


 ご相談頂いたお話の内容は聴くほどにストレスを感じ、『その部屋に入るのさえ億劫になる』。特に、レビンソンノのプリからアキュフェーズに替えて音がキンキンになり、堪えられなくなって私に電話をしたのだと仰るのです。

 何はともあれどんな音なのか聴かせて頂きます。低音と高音が上下に分離して水と油のような関係になっています。特に異様なまでに膨らんだ低音のダブツキ感が耳につきました。


 私はその原因の1番はスピーカーと部屋の位置関係にあるとみました。

 2番目はスピーカーとオーディオラックの下に敷いてある鉄板が悪さをしています。

 もう一つ、良い意味でビックリした事はあまりにも素晴らしい床です。

 これは今まで見た床の中で紛れもなくNO.1です。

 その中身を聞いて2度ビックリ!。

 厚さ25ミリほどの無垢木だというのです。

 この床さえあれば何処よりも素晴らしい音を出す事が出来ると直感しました。私の描いたイメージはこの素晴らしい床を平面スーパーウーハーに仕立て上げる事です。スピーカーの振動のタイミングと合わせてやりさえすればそれが実現するはずです。


 1曲お聞かせ頂いた時点で私の頭の中にはもうクリニックのプランが出来上がっております。先ずその内容を簡潔にお話します。初めに「空間の時間軸」の説明をさせて頂き、スピーカーと部屋との位置関係が拙いから今の音になっているのであって、それを1ミリ刻みでベストの関係に追い込んでやれば簡単にこの問題は解決するのです。

 目星をつけた現時点でのスピーカーの位置はおそらく”カイザーウエーブ”の谷間のはずです。ですからその正反対の音を知って頂く為には、0.15kaiser(157.5ミリ)の半分の0.075kaiser(78.75ミリ)前にずらした音を聞けば分かるのです。

 その180度反対の音とは低音が痩せぎみな音です。実行する前にその変化するであろう音を事前に告知してからやるわけですから、これほど明快な事は他にありません。

 ”カイザーゲージ”があれば、音の傾向パターンが目に見えますのでイメージしやすいのですが、まだ出来上がっていませんので床にマーキングテープを貼り、それに合わせて普通のコンベックスをあてがいます。


 Hさんに手伝ってもらいながらスピーカーを0.075kaiser前に移動させました。

 そして、先ほど聴いたダイアナ・クラールを聴きます。

 ・・・すると、いかがでしょう!?。

 先ほどとは正反対の「スマートな音」になったではありませんか!。

 これにはHさんもビックリしたようです。


 どうやらこの一件でHさんは私の腕を信用してくれたみたいです。

 そして、おもむろに訊ねます。

 「どちらの音がいいですか?・・・」。

 『断然こちらが良いです!』。

 とハッキリとした答えが返ってきました。

 「ほぼ、良いポイントに来ているみたいですが、もう一歩ですね」。


 面倒でもその半分の位置に戻して聴いてみる事にしてみます。

 『明らかに最初に動かした所が良いです』。

 更に半分、また半分と細分化していきますと集中力が増して、

 1ミリ刻みでピタッとピンポイントに入った感じが分かるようになります。

 これは何回やっても、どなたも同じように判断出来るから不思議です。

 不愉快極まりなかった音から一気に音楽に生まれ変わった瞬間です。

 この後スピーカーにPB-BIG JAZZを入れて試聴です。

 音数が増えて、今まで聞こえなかった音が聞こえて来るようになります。

 元々機材のポテンシャルが高い分だけ音の向上具合が凄いです。

 この感触に手応えを感じられたのでしょう、

 Hさんは全ての機材にBIG JAZZを入れる決断をされるのです。


 その数「何と39個です!」。

 一度に売れた今までの記録が29個で、

 後にも先にもこの数字を越える事は無いだろうと思っていましたが、

 一気に10個も越えてしまったのには驚き以外のなにものでもありません。

 その後ナイアガラと電源ケーブルAC-5EXのセットで聴いて頂きました。

 音楽にこれ見よがしではない自然な実在感が現れ、

 これも手放せない物となったみたいです。

 最後にHさんおっしゃるに映像のプロはいるのだけれど、

 音のプロが本当にいないのには苦労しました。

 『カイザーさんに出会えて良かったと思います』と言って頂けた時には

 涙が出るほど嬉しい気持ちになりました。 




 2003年6月1日 ミラクルサウンド・スクリーンを持って二度、三度の訪問


 JBL/S-9800とMcIntosh/MC-1201の奏でる音は、濃厚かつ堂々とした風格の音であります。ジャズ向きの印象の強いJBLですが、この9800はむしろ雄大なクラシックのシンフォニーの方が良く似合うほどです。

 それぐらい完成度の高いスピーカーに仕上がっております。目を閉じて聴けば誰もJBLの音とは思わないでしょう。それだけのポテンシャルを感じさせるものですから、私はミラクルサウンド・スクリーンとペアーを組んだ音を是非とも体験して貰いたく、思わず試聴してみて下さいとお勧めしたのです。

 ピアノ、大型スクリーン、部屋のコーナーの柱部分の出っ張り等、沢山の制約の中でのセッティグになり、今迄の中で一番苦労しました。一度はそのデリケートかつ強力な音楽エネルギーが手に余ると判断され導入を躊躇されたのですが、物凄い可能性も片一方では感じるので、もう一度セッティングを基本からやり直す事になったのです。

 今日で3度目の訪問です。元から天井にはルームチューニングパネルが取り付けられてあったのですが、それも一旦取り外し、響きの方向をチェックした上で付け直しました。また、Hさんからご指摘があったのは、右側のスピーカーに広がりが無いと言うのでスピーカーユニットのエネルギーの方向を調べてみる事にしました。

 耳を近づけて聴くと、確かにウーハーの音が左内側45度上方向に強く出て外側には出ておりませんでした。すなわち、全体に左流れになっていたのです。それにしてもHさんの耳は凄いです。

 左が壁、右が窓にカーテンですから、その条件の違いがそうさせていると見るのが普通ですが、これを解消するには「ウーハーユニットの取り付け角度を90度時計方向にずらすしかない旨をお伝えしました」。

 「ボイスコイルから出ている錦糸線のナマズのヒゲの向きが、視覚的に横に向きますが変更なさいますか?」とHさんの判断を仰ぎました。『思い切ってやってみよう!』というお返事をもらいましたので、息子と3人がかりでやっとの思いで付け直しました。


 10数キロはあろうかというような驚異的な重さのウーハーでした。

 少しエンクロージャーの位置が動いたので、

 もう一度念入りに前後位置や、角度の微調整をした上での試聴です。

 音が出た瞬間!、完璧に左右のエネルギーバランスが揃ったのが分かりました。

 今までどうしても解決しなかった問題が解けた瞬間でもありました。

 合わせた両方の手の平を広げたように、完璧な相似形が目の前に展開したのです。


 一切の妥協を廃してのセッティングをするのが今回のテーマですから、思い切ってピアノを10センチほど手前に動かす事になりました。これで何とか、左右のサウンド・スクリーンを同一条件に置く事が出来るようになりました。すると、今までとは見違えるような音に変わったのです。


 そうです、どの楽器の音も最高品位の音に格上げになったかのようです。

 それでいて音の切れ味が増し、

 生命、いや、音に魂が宿ったような変貌ぶりなのです。

 電気系の機器がいくら高性能になったからといって出てくる類のものとは明らかに違います。

 空気の響きそのものが生き生きとして、

 生命感に満ち溢れ、正に命の息ぶきを見ているようなのです。



2003年10月22日 大改革

 我ながらビックリの”末広がりパターン”


 60センチ四角で出来た音響拡散凸凹パネルを取り付けてきました。ひょんな事からいきさつ上そうなったのです。『アナログプレーヤーが手に入ったので、インシュレーター他、いくつか届けて欲しい物がある』という事でナイアガラ、スピーカーケーブル、スピーカーアタッチメント等を配達に上がりました。

 私が伺った時にはもう既に他の業者さんも納品設置に来られていました。今まで天井に取り付けてあったアコースティックリバイブ製の物を外し、新たにQRDに交換するという現場に立ち会ったのです。どうせでしたら方向性と流れの良い順番に施工されたら如何でしょう?と提案申し上げました。

 また、どのようなパターンで、何枚取り付けようかと思案されていたので、私がとっさに紙の上に書いて、「3枚、4枚、5枚と聴き手に向かって末広がりになるようなパターンは如何でしょう?」とお見せした。

 商売繁盛につながる縁起の良い末広がりの並びは、常日頃から私自身大切にしているものです。それが証拠に広島の電話番号は3456ですし、車のナンバーもシトロエンの2台が3456です。正直言って、このアイディアには我ながらビックリです!。

 発砲スチロールで出来たパネルを、縦にしたり、横にしたりしながら方向性を調べている私の姿を見ても、D社のAさんは何一つ不思議そうな顔はしていませんでした。そんな様子に私は逆に拍子抜けした感があります。


 伝家の宝刀”加速度組み立て”を実際に披露


 この加速度組み立てという効果の程を理解して頂くには、いきなり取り付けてしまうのですから確認のしようがありません。そこで伝家の宝刀であるスピーカーユニットのネジの順番締めをお披露目するしかありません。

 以前にも右チャンネルのウーハーユニットを取り付け変更して、音の効果については確認済みですから今回の話にしても簡単にO.Kです。まず方チャンネルだけの効果を見て頂き、その低・中・高3つのユニットの一体感から、片側からは音が聞こえなくなるほどエネルギーに差が出るのです。

 納得顔のS.Hさんは、Aさんにも盛んに特等席で聴いてみるように奨めます。この不思議な効果に包まれながら一気に片方も仕上げます。凄いですねー左右揃った時のこの迫力は、映像用として縁に置いてある46センチ口径のスーパーウーハなど形無しだそうです。

 今回の音的グレードアップは大変なもので、物凄い次元の音になった事にご機嫌の様子でした。頭の中にイメージされている音の理想からいくと今鳴っているのは何点ぐらいですかとお訊ねすると65点と仰る。「どこまでの音を出そうとしているのか本当に欲深いですね!」と仕向けると、『フ、フ、フ・・・』と不敵な笑みを浮かべておられました。


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